Column
公開日
2026.4.8
更新日
2026.4.22

「突然、腰や脇腹に激しい痛みが走った」「ぎっくり腰かと思ったら、実は尿管結石だった」——このようなご経験をお持ちの方、あるいは周囲にそういった方がいらっしゃることはないでしょうか。
実は、気温と尿管結石発症の間には科学的な関連が報告されており、皆さんにぜひ知っておいていただきたい情報があります。
突然の激しい腰痛・側腹部痛の原因として、尿管結石は見落とされがちな疾患のひとつです。尿管結石による痛み(尿管疝痛)は、腰やわき腹から始まり、下腹部や鼠径部へと広がることがあり、「人生で最も強い痛みのひとつ」と表現される患者さんも珍しくありません。
腰の痛みというと、多くの方は整形外科的な疾患、たとえばぎっくり腰や椎間板ヘルニアを最初に思い浮かべるかもしれません。
しかし尿管結石による痛みは、左右どちらか一方に現れることが多く、安静にしても、体を動かしてもあまり痛みが変化しないという特徴があります。
また、吐き気や嘔吐を伴ったり、血尿(尿が赤みがかっている)が現れたりすることもあります。
突然の強い腰痛・側腹部痛では、尿管結石という可能性も念頭に置いていただくことが大切です。
📌 ポイントまとめ
突然の激しい腰痛・側腹部痛は尿管結石が原因である可能性がある
安静にしても痛みが和らがない場合や、吐き気・血尿を伴う場合は特に注意が必要
整形外科的な腰痛との区別が難しいこともあるため、思い当たる方は泌尿器科への受診をご検討ください
気温の上昇と尿路結石の発症には、科学的な関連が報告されています。Tasian らが米国の5都市(アトランタ、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、フィラデルフィア)で2005〜2011年に行った大規模な時系列研究では、日平均気温が10°Cのときと比べて30°Cのとき、結石を主訴とした受診リスクが各都市でおおむね高くなる傾向が示されました[1]。
具体的には、日平均気温30°Cにおける20日間の累積相対リスクは、アトランタで1.38(95%CI: 1.07–1.79)、シカゴで1.37(95%CI: 1.07–1.76)、ダラスで1.36(95%CI: 1.10–1.69)、フィラデルフィアで1.47(95%CI: 1.00–2.17)と報告されています[1]。なお、ロサンゼルスでは同様の傾向が統計学的有意差には達しませんでした[1]。
この研究の対象となった5都市は、世界人口の約30%が暮らす気候帯を代表しているとされており[1]、気温と結石発症の関係は世界的にも共通する可能性が考えられます。
なぜ気温が上がると結石リスクが高まるのでしょうか。
高温環境下では発汗による水分が失われ、尿量が減少して尿が濃縮されます。これにより尿中のカルシウムや尿酸の濃度が相対的に高まり、結石の核となる結晶が形成・成長しやすくなると考えられています[1]。
📌 ポイントまとめ
日平均気温30°Cのとき、10°Cのときと比べて結石の受診リスクが複数の都市で高い傾向が示されている[1]
高温環境では発汗による脱水が起き、尿が濃縮されて結石が形成されやすくなると考えられている[1]
この関連は異なる気候帯の都市でも概ね一貫しており、広く共通する現象である可能性がある[1]

この研究で特に注目すべき点のひとつは、気温上昇から結石症状の出現までの時間が非常に短いということです。Tasian らの研究では、気温30°Cの日から3日以内に結石受診リスクが最も高くなると報告されており、4〜6日後に二度目のピークが見られる都市もあったとされています[1]。
この「数日以内」という短いタイムラグは、脱水によって急速に尿の成分が濃縮され、石が短時間で成長するという仕組みと整合するものと研究者らは考察しています[1]。
そのため、「昨日・今日と暑い日が続いたな」と感じた数日後に、突然の腰や脇腹の痛みが起こるという経過がありえます。
また同研究では、一部の都市において低気温(2°C未満や10°C未満)でも尿管結石の受診リスクが高まる傾向も示されました[1]。冬の寒い時期に室内で過ごす時間が長くなると、知らず知らずのうちに水分摂取が減る、あるいは屋外と室内の温度差によって体の水分バランスが乱れるといった要因が関係している可能性が考えられています[1]。
日本でも夏の暑い時期だけでなく、季節の変わり目や気温差の大きい時期には注意が必要と言えるかもしれません。
📌 ポイントまとめ
気温が高い日から3日以内に結石の受診リスクが最も高くなる傾向が報告されている[1]
暑さによる脱水→尿の濃縮→結石形成という経過が数日以内に起こりうると考えられる[1]
低気温の環境でも結石リスクが高まる可能性があり、冬場の水分不足にも注意が必要[1]
日本に限らず、世界的な傾向として報告されており、欧州・アジア・米州の広い地域で過去30年間に尿路結石の有病率が顕著に増加していることが知られています[1]。
Tasian らの研究が発表された背景には、地球温暖化という大きな問題があります。温室効果ガスの排出が続いた場合、今世紀中に世界の平均気温は1〜4.5°C上昇すると推計されており[1]、これが結石の発症リスクにも影響を及ぼす可能性があります。同論文でも引用されたBrikowski らのモデルでは、気温上昇によって2050年までに米国で新たに160〜220万件の結石が生じると推計されたと紹介されています[1]。
また、この研究で興味深い点として、年間平均気温が同じ17°Cであったアトランタとロサンゼルスを比較すると、アトランタの結石有病率はロサンゼルスの約2倍であったことが挙げられます[1]。アトランタでは年間に日平均気温が27°Cを超える日が平均53日あったのに対し、ロサンゼルスでは10日程度にとどまっていたとされており[1]、年間の平均気温よりも「真夏日が何日あるか」という指標のほうが、結石の発症リスクをより反映している可能性が示唆されています[1]。
📌 ポイントまとめ
欧州・アジア・米州で過去30年間に尿路結石の有病率が顕著に増加していると報告されている[1]
地球温暖化が進むと、今後さらなる結石患者数の増加が懸念される[1]
年間平均気温よりも「暑い日(高温日)が何日あるか」のほうが結石リスクをよく反映する可能性がある[1]

Q. 尿管結石はどんな痛みが特徴ですか?
A. 突然の激しい腰痛・側腹部痛が典型的です。痛みは波のように強くなったり和らいだりすることがあり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。また、尿が赤みがかって見える血尿が現れることもあります。安静にしても痛みが軽くならない場合は、早めにご受診ください。
Q. 夏に突然の腰痛が起きたとき、まず何をすればよいですか?
A. 水分をゆっくりとりながら、できるだけ早く医療機関を受診されることをおすすめします。尿管結石の痛みは非常に強く、適切な鎮痛処置が必要なことも多いです。我慢しすぎず、泌尿器科またはお近くの救急へご相談ください。
Q. 結石ができやすい季節はいつですか?
A. 研究では、気温の高い時期(夏場)に結石の受診が増える傾向が報告されています[1]。また、一部の研究では寒い時期にもリスクが上がる可能性が示されており[1]、季節の変わり目を含めた年間を通じての水分摂取と定期的な健康管理が重要です。
Q. 結石を防ぐために日常生活で気をつけることはありますか?
A. 論文の内容から示唆されるように、気温が高い時期の脱水予防が重要と考えられます。特に暑い日や運動後は意識して水分を補いましょう。また、尿管結石は再発しやすい病気であることも知られており[1]、一度でも結石の経験がある方は泌尿器科で定期的な管理を受けることをおすすめします。
突然の腰痛・側腹部痛は、尿管結石のサインである可能性があります。気温が高い日から数日以内に結石症状が現れやすいこと、そして気温の上昇が結石の発症リスクと関連する可能性があることが、大規模な疫学研究によって示されています[1]。夏場の水分不足はもちろん、季節の変わり目の体調管理も大切です。
「この痛みは結石かもしれない」と思った方、あるいは以前に結石を経験していて再発が心配な方は、早めにご相談ください。
当院では超音波検査を院内で行うほか、必要に応じて近隣でのCT検査もご案内しています。診断から治療方針のご提案まで、一人ひとりの状態に合わせて対応しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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監修・執筆
うつのみやLA泌尿器科クリニック
院長 鈴木一生(医師・医学博士)
参考文献
[1] Tasian GE, Pulido JE, Gasparrini A, Saigal CS, Horton BP, Landis JR, Madison R, Keren R, for the Urologic Diseases in America Project. "Daily mean temperature and clinical kidney stone presentation in five U.S. metropolitan areas: a time-series analysis." Environ Health Perspect 122:1081–1087, 2014. https://doi.org/10.1289/ehp.1307703
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