Column
公開日
2026.4.14
更新日
2026.4.14

「夏になると精子の状態が悪くなるって本当ですか?」——と、よくいただく質問のひとつです。
結論からお伝えすると、精巣(睾丸)は熱に弱い臓器であり、暑い環境が続くと精子の数や動きが低下することがあると、複数の研究で示されています。夏の生活習慣を少し意識するだけで、精子の状態を守ることにつながる可能性があります。
精子が正常につくられるためには、体の中よりも約2℃低い温度が必要です。 だからこそ、精巣は体の外側にある陰嚢(いんのう)という袋の中に収まっているのです。
「なぜ精巣だけ体の外にあるのだろう?」と不思議に思われる方もいるかもしれませんが、これは精子をつくるための温度管理のためです。精子をつくる働きは熱を生み出すため、陰嚢が熱を逃がし、精巣を適切な温度に保っています [1]。
しかし、長時間にわたって精巣が温められた状態が続くと、精子をつくる働きが弱まり、精子の数や質が落ちてしまうことがあります。 [1]。
📌 ポイントまとめ
精子は体内より約2℃低い環境でつくられる
陰嚢は精巣を冷やすための大切な「冷却システム」
精巣が長く温められ続けると、精子の数や質が落ちることがある
長時間のデスクワークや車の運転、きつめの下着、膝の上でのパソコン作業など、夏によくある習慣が精巣を温めてしまうことがあります。
研究によると、座りっぱなしの姿勢は精巣の温度を上げやすいことがわかっています。歩いているときは空気が通って熱が逃げますが、座り続けると精巣が太ももに挟まれた状態になり、温度が上がりやすくなります [1]。
下着のサイズも影響することがあります。ぴったりしすぎる下着を着けると陰嚢の温度が約1.5〜2℃上がることが示されており、精子の動きや数に影響する可能性が指摘されています [1]。また、ノートパソコンを膝の上に乗せて長時間作業すると、パソコンの熱が陰嚢に伝わり、精子に悪影響を及ぼす可能性があることも報告されています [1]。
さらに、ヨーロッパの複数の都市で行われた調査では、夏の精子の数が冬に比べて30%少なかったという結果が出ています [1]。当院では、妊活中のご夫婦に対して、こういった生活習慣のご相談にも丁寧に応じています。
📌 ポイントまとめ
座りっぱなしの姿勢は精巣の温度を上げやすい
きつめの下着は陰嚢の温度を約1.5〜2℃上昇させることがある
夏の精子の数は冬より30%少なかったとの研究報告がある [1]
精巣が熱にさらされると、精子の数や動きが落ちるだけでなく、精子の「遺伝情報(DNA)」が傷つく可能性もあることがわかってきています。
精液検査で異常は無かったがなかなか妊娠が成立しないと悩まれる方が一定数いらっしゃいます。その背景のひとつとして、精子のDNAの傷つきが関係している可能性があります。通常の精液検査では精子の数・動き・形を調べますが、DNAレベルのダメージは見た目ではわからないため、見落とされることがあるのです。
研究では、精巣が一時的に温められるだけでも、精子の酸化ストレスが増え、DNA損傷が起こりやすくなること、そして精子のエネルギーを生み出すミトコンドリアの働きが低下することが確認されています [1]。
また、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)という、精巣周辺の静脈がこぶのように膨らむ病気は、精巣の温度が上がりやすい状態にあり、精子のDNA損傷がより起こりやすいことが示されています [1]。病気が疑われる場合は、早めに泌尿器科を受診されることをお勧めします。
📌 ポイントまとめ
熱ストレスは精子の数・動きだけでなく、DNA(遺伝情報)にもダメージを与えることがある
精子のDNA損傷は通常の精液検査では見えないため、気づかれにくい
精索静脈瘤の経験がある方は特に注意が必要

精巣への熱の影響は、日常生活の工夫である程度防ぐことができます。多くは今日からでも始められる、シンプルな習慣の見直しです。
研究では、生活習慣や行動は「変えられるリスク要因」であり、意識して熱を避けることで精巣の温度を下げられることが強調されています [1]。以下のことが研究からも裏付けられています。
まず、座りっぱなしを避けることです。デスクワークや長時間の運転が続く場合は、1時間に一度は立ち上がる習慣をつけましょう。次に下着の選び方として、ゆったりしたボクサーパンツや下着を選ぶことで、陰嚢の温度上昇を抑えられる可能性があります。夜間は締め付けのない状態で眠ることも、陰嚢温度を低く保つうえで効果的とされています [1]。
ノートパソコンは膝の上ではなく机の上に置いて使うようにしましょう。また、サウナや長時間の熱いお風呂についても注意が必要です。研究では、一度の高温サウナ(85℃で20分)でも精子の数が一時的に減少したという報告があります [1]。ただし、影響は多くの場合一時的であり、回復することも確認されています。
なお、インフルエンザなどで高熱を出した後も、精子の数や動きが一時的に落ちることがあります。回復には数週間から数か月かかる場合がありますので、妊活中の方は主治医に相談されることをお勧めします [1]。
📌 ポイントまとめ
こまめに立ち上がり、座りっぱなしを避けることが大切
ゆとりある下着を選び、ノートパソコンは膝上で使わない
高熱の後は精子の状態が一時的に落ちることがあり、回復には数か月かかる場合もある
Q. 夏だけ精子の状態が悪くなることはありますか?
A. 季節による精子数の変動は研究で報告されており、夏に少なくなる傾向を指摘するデータがあります。ただし個人差があるため、妊活中の方は季節を問わず一度精液検査を受けることをお勧めします。
Q. サウナや熱いお風呂は精子に悪いですか?
A. 研究では、高温のサウナへの短時間の入浴でも精子の数が一時的に減少することが示されています。ただし多くの場合は回復するとも報告されています。妊活中はサウナの頻度・温度・時間を控えめにすることをお勧めします。
Q. どんな症状があったら受診すればいいですか?
A. 「1年以上避妊せずに妊活しているが妊娠しない」「精液検査で異常を指摘された」「陰嚢にこぶのようなものがある(精索静脈瘤の可能性)」などがあれば、一度泌尿器科を受診されることをお勧めします。症状がなくても、妊活を始めたタイミングで男性側の検査を受けることも大切です。
精子は熱にとても弱く、夏の暑さや日常的な生活習慣によって精巣が温められ続けると、精子の数・動き・DNA の質が低下することがあります。しかし、多くは生活習慣を少し見直すことで対処できる可能性があります。
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監修・執筆
うつのみやLA泌尿器科クリニック
院長 鈴木一生(医師・医学博士)
参考文献
[1] Fraczek M., Kamieniczna M., Budzinska M., Kurpisz M., "Hyperthermia and Sperm Quality – A Risk Factor for Male Infertility or Contraceptive Target", Postępy Andrologii Online (Advances in Andrology Online), 2018, 5(2), 48–61. DOI: 10.26404/PAO_2353-8791.2018.07
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