Column
公開日
2026.9.4
更新日
2026.8.31

こんにちは!うつのみやLA泌尿器科クリニック 院長の鈴木です。
🌀「走ったり、くしゃみをしたりしたときに尿が漏れてしまう」
🌀「骨盤底筋トレーニングがよいと聞くけれど、やり方がわからない」
こうした尿もれに関する悩みは少なくありません。実際、尿もれは40歳以上の女性の4割以上が経験しているといわれています。
とはいえ、尿もれは人に相談しづらく、どうすればよいか分からないまま我慢してしまう方も多いものです。でも、原因や状態に応じた対処で、改善が期待できる場合があります。
今回は、骨盤底筋トレーニングのやり方と、セルフケアだけで様子を見ず、受診を検討したいケースについて解説します。

骨盤底筋は、骨盤の底でハンモックのように広がる筋肉の集まりです。膀胱や子宮、直腸などを下から支え、尿道や肛門を締める働きもあります。
普段は意識しにくい筋肉ですが、排尿をコントロールするうえで大切な役割を担っています。
骨盤底筋の働きが低下すると、尿道を支える力が弱くなります。そのため、咳やくしゃみ、走る・ジャンプする、重い物を持ち上げるなど、お腹に力が加わる場面で尿が漏れやすくなるのです。
骨盤底筋に負担をかける要因として、次のものが挙げられています。
✅ 加齢
✅ 出産
✅ 重い物を持つ仕事(荷重労働)
✅ 排便時の強いいきみ
✅ 喘息などによる慢性的な咳
ただし、すべての尿もれが骨盤底筋の弱さによって起こるわけではありません。
尿もれは、主に次の4つに分けられます。
腹圧性尿失禁:咳や運動などで、お腹に力が入ったときに起こる
切迫性尿失禁:突然の強い尿意に耐えられず、トイレまで間に合わない
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁:尿を出したいのに出せず、たまった尿があふれるように漏れてしまう
機能性尿失禁:排尿機能に問題はなく、身体機能の低下や認知症などによって生じる
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方がある場合は、「混合性尿失禁」です。
女性の尿失禁では腹圧性尿失禁が最も多く、週1回以上経験する女性は500万人以上といわれています。骨盤底筋トレーニングは主に腹圧性尿失禁の改善に役立ちます。切迫性尿失禁や混合性尿失禁に対して行う場合もあります。尿もれの種類によって適切な対策は異なるため、自己判断で決めつけないことが大切です。

当院で案内しているトレーニング方法と回数をご紹介します。
はじめは、あお向けで両膝を立てた姿勢が取り組みやすいでしょう。
肩の力を抜き、自然に呼吸します
息を止めず、肛門と腟のまわりをきゅっと締めます
5秒ほど保ち、ゆっくり力を抜きます。難しい場合は、最初は無理なく保てる時間から始め、少しずつ延ばしましょう
5秒ほど休みます。締めてから休むまでの動きを、合計10回行いましょう
10回を1セットとし、1日5セットを目安に行いましょう
慣れてきたら、立った姿勢でも行えます。足を肩幅程度に開き、肩の力を抜いて、あお向けのときと同じように骨盤底筋を締めて緩めましょう。キッチンでの作業中など、日常生活にも取り入れやすい姿勢です。
締める感覚がつかみにくい場合は、尿や便を我慢するときのように、尿道・腟・肛門のまわりを内側へ引き上げるイメージを持つとよいでしょう。ただし、実際の排尿中に尿を止める動作は、トレーニングとして繰り返さないでください。排尿を途中で止めた場合、通常どおり排尿した場合よりも残尿量が多くなったという報告があるためです。
お腹やお尻に力が入りすぎていないか、息を止めていないかも確認しましょう。感覚がつかめない場合は、泌尿器科へご相談ください。
骨盤底筋トレーニングは、少なくとも3か月行うことが推奨されています。まずは3か月を目安に、正しい方法で続けてみましょう。ただし、3か月で必ず改善するという意味ではなく、経過には個人差があります。
次のような症状があるときは、泌尿器科で相談しましょう。
✅ 尿もれの量や回数が増えている
✅ 尿もれが心配で、外出や運動を控えている
✅ 頻尿や強い尿意、排尿時の痛みがある
✅ 尿が出にくい、残っている感じがある
✅ 腟から何かが下がるような違和感がある
尿もれの種類に応じて、生活指導や膀胱訓練、飲み薬などを検討します。肥満がある方では、食事や運動による減量も、ガイドラインで推奨されている尿もれ対策の一つです。
なお、切迫性尿失禁の原因となる過活動膀胱では、症状に応じて薬物療法など別の治療を行います。当院では、飲み薬で十分な効果が得られない過活動膀胱に対する治療にも対応しているので、詳しくは下記ページもご覧ください。
女性の尿もれは、泌尿器科で専門的に診療している症状の一つです。とはいえ、泌尿器科は男性が受診する診療科というイメージを持たれやすく、尿もれや陰部の症状を話すことに抵抗を感じる方も少なくありません。
当院の診察では、まず症状を詳しく伺います。必要に応じて、尿検査や超音波による残尿測定など、体への負担が少ない検査から検討します。
また、女性医師の診療日があるのも特徴です。女性医師への相談を希望される場合は、予約時にお問い合わせください。
A. できます。
妊娠中や産後の骨盤底筋トレーニングは、日本のガイドラインでも推奨されており、すでに尿もれがある方では、悪化を防ぐ効果も期待されています。
ただし、産後の体の回復には個人差があるため、始める時期や運動の強さは、産後健診などの機会に相談しましょう。
A. 呼吸法やヨガ、太極拳、フィットネスなども骨盤底筋を鍛える方法として報告されていますが、通常の骨盤底筋トレーニングより有効だという報告はありません。
体を動かす習慣がある方は、尿もれが起こりにくいという報告があります。続けている運動はそのままに、骨盤底筋トレーニングもあわせて取り入れてみてください。
骨盤底筋トレーニングは、腹圧性尿失禁や混合性尿失禁に効果が期待できます。正しい方法で、3か月を目安に続けることが大切です。
ただし、3か月間受診せずに様子を見るという意味ではありません。尿もれが気になるときや、正しくトレーニングできているか不安なときは、早めにご相談ください。尿もれの量や回数が増えているとき、排尿時の痛みや尿の出にくさがあるときも、セルフケアだけで様子を見ないようにしましょう。
出産後の尿もれや、咳・くしゃみ・運動時の尿もれに悩んでいる方は、ひとりで抱え込まずにご相談ください。
これからも、皆さんに役立つ情報をお届けしていきます。
日本泌尿器科学会「尿が漏れる・尿失禁がある」
日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会編「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版」(2019)、「女性下部尿路症状診療ガイドライン 第2版(修正・追加2024)」(2024)
Chesnel C, et al.「Influence of the urine stream interruption exercise on micturition」International Journal of Urology. 2019;26(11):1059-1063.
National Institute for Health and Care Excellence(NICE)「Urinary incontinence and pelvic organ prolapse in women: management」(2019)
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