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夏に膀胱炎が増える理由と予防のポイント

公開日

2026.4.11

更新日

2026.4.11

「夏になると膀胱炎が増える」——これは泌尿器科の現場でよく実感することですが、近年の大規模研究によって、気温の上昇が膀胱炎のリスクを高めることが科学的に示されています。

キーワードは"脱水"です。脱水になると尿量が減り、細菌が定着しやすくなります。暑い季節はこまめな水分補給が重要です。

膀胱炎は夏に多く発生する感染症である

膀胱炎(尿路感染症)は、夏から初秋にかけて発症件数が増加することが知られており、気温の上昇がその主要な要因のひとつと考えられています。

アイオワ大学の研究グループが2001年から2015年にかけて米国約400都市・総計1億6,700万人年以上のデータを解析した大規模研究では、前週の平均気温が25〜30℃であった日の膀胱炎発症率は、気温が5〜7.5℃だった時期と比較して20〜30%高かったことが報告されています[1]。この増加は偶然ではなく気温と膀胱炎には明確な関連があると考えられます。

📌 ポイントまとめ

  • 膀胱炎(尿路感染症)の発症件数は夏から初秋にかけて増加する傾向がある

  • 前週の平均気温が25〜30℃の日は、涼しい時期(5〜7.5℃)と比較して発症率が20〜30%高くなる可能性がある[1]

  • この関係は「用量反応関係」として示されており、気温が上がるほどリスクが高まると考えられている[1]

気温上昇による脱水が膀胱炎リスクを高める

気温が上がると膀胱炎リスクが高まる最も重要なメカニズムは、発汗による脱水と尿量の低下です。暑い環境では、体は体温を調節するために汗をかきます。十分な水分補給ができていないと、体内の水分量が不足(脱水)し、その結果として尿量が減少します。

尿は膀胱や尿道に入り込もうとする細菌を物理的に洗い流す役割を担っています[1]。尿量が減ると、この洗い流しの効果が弱まり、細菌が尿路に定着しやすくなります。さらに、尿量が減ることで尿中の細菌濃度も高まり、感染が成立しやすい条件が整ってしまいます[1]。

また、気温が上昇すると女性の尿道周囲の皮膚に存在する細菌の数が増えることも報告されており[1]、複数の要因が重なって夏に膀胱炎が増えると考えられています。

水分摂取量の重要性を示すデータとして、膀胱炎を繰り返しやすい女性を対象にした無作為化対照試験では、1日あたり1〜5リットルの水分摂取を増やしたグループは、水分摂取量を変えなかったグループと比べて、翌年の膀胱炎発症数が半分程度にとどまったという報告があります[1]。これは水分補給が膀胱炎予防に寄与できる可能性を示す重要なデータです。

※1〜5リットルの水分摂取が推奨されているわけではありません。

📌 ポイントまとめ

  • 気温上昇→発汗→脱水→尿量低下という連鎖が、細菌の尿路への定着を促す可能性がある[1]

  • 尿量の低下は細菌を洗い流す機能を弱め、さらに尿中の細菌濃度を高める可能性がある[1]

  • 水分摂取量を増やすことで膀胱炎の発症を抑制できる可能性が、無作為化対照試験で示されている[1]

膀胱炎になりやすい人には一定の傾向がある

膀胱炎になりやすい人には一定の傾向があり、その背景を知ることが予防につながります。膀胱炎になりやすい因子として知られているものには、過去の膀胱炎の既往、糖尿病、泌尿器系の解剖学的異常、そして水分摂取量の少なさなどが挙げられています[1]。

特に女性は体の構想的に尿道が短く、外部から細菌が侵入しやすい構造であるため、男性と比べて膀胱炎を起こしやすい傾向があります。

また、先述の研究では年齢別の分析も行われており、比較的若い成人(18〜24歳)でも気温との関連が認められています[1]。夏の行動様式(アウトドア活動の増加など)も関係する可能性があると研究者らは指摘しており[1]、生活習慣と環境因子が複合的に作用していると考えられています。

📌 ポイントまとめ

  • 膀胱炎のリスク因子には過去の既往、糖尿病、水分摂取不足などが含まれる[1]

  • 女性は体の構造的な理由から男性より膀胱炎を起こしやすく、夏の環境変化の影響を受けやすい

  • 生活習慣(水分補給・排尿の習慣)の見直しがリスク低減につながる可能性がある

夏の膀胱炎を予防するために日常生活で実践できることは?

気温が上がる季節には、意識的な生活習慣の見直しが膀胱炎予防に役立つ可能性があります。

特に重要なのはこまめな水分補給です。前述の通り、水分摂取量の増加が膀胱炎の再発抑制に関係した可能性を示す研究データがあります[1]。夏場は気づかないうちに発汗で水分を失っていますので、のどが渇く前に飲む習慣をつけることが大切です。

また、排尿を長時間我慢することは細菌が膀胱内に留まる時間を長くするため、好ましくありません。夏のレジャーや移動の際も、適切なタイミングでトイレに行けるよう心がけていただければと思います。

📌 ポイントまとめ

  • 夏場はこまめな水分補給を意識し、尿量を保つことが膀胱炎予防に役立つ可能性がある[1]

  • 長時間の排尿我慢を避け、適切な排尿習慣を維持することが重要

  • 「また膀胱炎かな」と思ったら自己判断せず、早めに泌尿器科を受診することが望ましい

よくある質問

Q. 夏に膀胱炎が増えるのはなぜですか?

A. 気温が上昇すると発汗が増え、十分な水分を補給できていない場合に脱水が起こります。脱水になると尿量が減少し、尿による細菌の洗い流し効果が低下するため、細菌が膀胱内に定着しやすくなると考えられています。大規模研究でも、気温が高いほど膀胱炎の発症率が高まる傾向が示されています[1]。

Q. 膀胱炎の症状にはどのようなものがありますか?

A. 主な症状として、排尿時の痛みや灼熱感、頻尿(何度もトイレに行きたくなる感覚)、残尿感、尿の濁りなどが挙げられます。発熱が伴う場合は、腎盂腎炎(じんうじんえん)など、より重篤な状態に進行している可能性もありますので、速やかに受診されることをお勧めします。

Q. 男性も夏に膀胱炎になりますか?

A. 男性も膀胱炎を起こすことはありますが、女性に比べると頻度は低い傾向があります。男性の場合、膀胱炎の背景に前立腺肥大症など別の泌尿器疾患が隠れていることがあります。先述の大規模研究は女性を対象としたものであり[1]、男性については別途評価が必要です。男性で排尿症状が出た場合も、早めに泌尿器科にご相談ください。

まとめ

膀胱炎は夏から初秋にかけて増加しやすく、気温の上昇が発症リスクを高める要因のひとつであることが大規模研究で示されています[1]。

脱水による尿量の低下が細菌の膀胱(尿の通り道)への定着を促すと考えられており、夏場のこまめな水分補給は膀胱炎予防に役立つ可能性があります。症状が現れた場合は、自己判断せず早期に泌尿器科を受診することが重要です。

当院では、症状の原因を丁寧に確認しながら、お一人おひとりに合った対応をご提案しています。気になることがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

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監修・執筆
うつのみやLA泌尿器科クリニック
院長 鈴木一生(医師・医学博士)


参考文献

[1] Simmering JE, Polgreen LA, Cavanaugh JE, Erickson BA, Suneja M, Polgreen PM. "Warmer Weather and the Risk for Urinary Tract Infections in Women." J Urol. 2021 Feb;205(2):500–506. doi:10.1097/JU.0000000000001383

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